兵藤哲朗委員長所信
2020年11月14日(第62回土木計画学研究発表会(ZOOM大会))
この度,藤原章正委員長を引き継ぎ,2020年6月より土木学会土木計画学研究委員会の委員長に就任しました.就任にあたり一言ご挨拶を申し上げます.
まず,春大会に続いて2大会連続でオンライン開催とせざるを得ない,今の異常な状況について触れざるを得ません.今現在も第3波の拡大が懸念されており,終息の見通しは全く立たない状況です.また国や地域で大きく感染状況が異なることも不安要素の一つです.このコロナ禍により,コミュニティの分断や,モビリティの縮小がもたらされました.そのことは,われわれ土木計画学に取り組む者にとっても喫緊の課題となっています.遠隔授業やテレワークの浸透と都市や国土構造のあり方,ソーシャルディスタンス下の公共交通の維持方策,地域コミュニティ再活性化のための都市・地域政策など,抜本的な転換も余儀なくされる局面も多々あります.まさに政策と実践への貢献が求められています.
さて,今年4月1日のシンポジウムを皮切りに,藤原前委員長と藤井幹事長のリーダーシップのもと,従来の土木計画学D3分野に加えて,「政策と実践」を標榜する新たなD4分野の創設が始まろうとしております.1966年の土木計画学の創成期から議論されていた,数的理論を支柱とする「土木・計画学」と,政策実践を企図する「土木計画・学」の明確な二本立てを論文集分野で位置づけることになります.実務者に限らず,大学の研究者でも実社会で重要な政策立案や土木計画学に関わる実践を展開されている方が多くいらっしゃいます.その経験・知見・知恵を後世に伝えるためにも,D4分野への論文投稿を期待したいと思います.具体的には来年の春大会からの論文受付を目指しているところです.
話を身近な場所に戻しますと,このパンデミック下でも相変わらず自然災害は発生し続けますし,自動運転や昨今流行りのデジタル化も急激なスピードで進展しそうです.土木計画学がカバーする領域が広いため,まだ社会の要請に応えきれていない側面もあるように思います.個人的には,「土木」という枠を超えた人材交流や,技術の取り込みに一層拍車をかけるべきと考えています.その間口を広げるためにも土木計画学研究委員会の存在意義を社会に向けて発信する必要があります.どのような方法が適切か,すぐには結論に至りませんが,委員長として努力を重ねてまいりたいと思っています.
末筆ではありますが,まずは何よりも皆様のご健康と体力維持を心よりお祈り致します.そしてリモートではなく,皆さんと普段どおりの対面学会でお会いできることを楽しみにしています.「普段どおり」と言っても,もはや今までの「普段」には戻れないかも知れませんが,それはわれわれ人類が少し知恵をつけた証左と言えるかも知れません.新しい生活を迎える中,引き続きの皆様のご協力をお願いし,就任の挨拶とさせていただきます.